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サプライズプレゼント3

「ねぇ…けいちゃん…だめ?」 固まってしまった圭ちゃんの袖をくいくいと引きながら、ぼくはわざと可愛らしく首をかしげてみせる。 しかし、圭ちゃんはぼくの仕草など目に入っていないのか首を忙しなく動かし何かを考えているようだった。 「命ちゃん…冗談だよね?」 「ん?何で?」 やっとぼくと目があった圭ちゃんの目は少し焦ったように泳いでいる。 それに暑いのか額には汗が滲んでいた。 さっきまで別に暑くはなさそうだったのに、空調が急に強くなったのだろうか。 「あっ!」 「玲?」 そんな圭ちゃんの横に玲ちゃんはちょこちょこと近付いてニコニコと楽しそうにしはじめた。 圭ちゃんは玲ちゃんの意図が分からないのか、更に戸惑っている。 「けいちゃんいいじゃない!しょうちゃんも、もうカラダはオトナなんだから!!」 「ん?身体?」 圭ちゃんは玲ちゃんの言葉に更に意味がわからないのか首を捻っている。 玲ちゃんは嬉しそうに圭ちゃんの言葉にウンウンとうなずいていた。 「あ、あぁ。そうだね。圭介…きっと命のいつもの言葉足らずだろうから気にしないでいいぞ」 パパも何か思い当たったのか圭ちゃんの肩をポンポンと叩いている。 どうもパパも玲ちゃんもぼくの味方をしてくれるらしい。 「でも…」 「けいちゃん…おねがい?」 渋る圭ちゃんに、ぼくはソファーで安らかに眠る翔ちゃんのお腹に抱きついて上目使いになる。 ぼくより大きな翔ちゃんの身体に手を回すと大きなぬいぐるみに抱き付いているようだなとふと思った。 「う゛ぅ…」 「はいはい。圭介の負けだ!普段は息子を邪険にしてるのに、いざ離れるとなると執着するのはダメ男な証拠だぞ。息子離れしないとな!」 言葉に詰まる圭ちゃんを尻目に、パパは翔ちゃんの手を取った。 翔ちゃんの身体を引き寄せると、そのままお姫様抱っこをする。 「じゃあ、玲ちゃん…良い夜を」 「パパさん good night.」 パパは放心している圭ちゃんを尻目に玲ちゃんに声をかけた。 玲ちゃんはパパに手を降りながら圭ちゃんを慰めている。 それからパパは翔ちゃんをお姫様抱っこをしたまま部屋を出ていくので、ぼくもちょこちょこと後に続いた。 「それで、命には考えがあるんだろ?」 ホテルの人がパパの車をエントランスまで持ってきてくれたので、それに乗り込みぼく達はマンションへの帰路を急いだ。 ぼくは助手席に座ってパパがギアチェンジをするのを見ていたのだが、急に声をかけられきょとんとした顔になる。 「翔をくださいなんて言い出すから、俺も流石に驚いたぞ」 「ん~。そのはなしは、おうちに帰ってからでいい?」 「そうだな…」 ぼくは起きないと分かっていても後部座席で寝ている翔ちゃんを気にすると、パパもミラーで後部座席を確認したのか頷いてくれた。 車はそのままマンションへ向けて車の少なくなった街中を駆け抜ける。 「それで?何でいきなりあんな話しになったんだ?」 帰宅後すぐにパパは翔ちゃんを着替えさせ、寝室のベットに放り込むと少し怒っているのか強い口調でリビングのソファーに居るぼくに問いかけてくる。 「ふふふ」 「こら、今は真剣に話をしてるんだぞ!」 ぼくがそんなパパについつい笑ってしまったので、パパが珍しく焦って近付いてきた。 「パパ、ぼくが翔ちゃんをほしいっていったからおもち焼いちゃったんでしょ?」 ぼくはにこにこしながら問いかけるとはぁーっと大きなため息をついてぼくを抱き上げ、代わりにパパがソファーに腰掛けた。 「そりゃ…プロポーズしようとした相手が、いきなり別の相手にプロポーズはじめたら焦るだろ」 「ぷろぽーず?だれが?」 「俺が」 「だれに?」 「命に」 パパの予想外の言葉に、一瞬ぼくの思考が止まった。 しかし、すぐにその言葉が胸に染みてきて頬が熱くなるのを感じる。 「まぁいいや…命?」 「ん?」 パパが改まった様子で、ジャケットから黒い箱を取り出した。 そこには大きなリングと、とても小さなリングが並んで入っていた。 「本当はお前を取り戻した時点で同じ籍に入れる事ができたんたが、俺はお前が18になるのを待ってた。今は日本でも男同士で結婚できる。だから、俺と結婚してくれないか?」 パパがそう言うと、小さいリングをぼくの薬指に通した。 「まぁ、お前の拒否権ははじめからないんだけど…」 ぼくは、その指輪をまじまじと観察していると大きなリングを渡されパパがずいっと指を差し出してくる。 それをゆっくりと自分の指と同じ指に通すと、銀色のリングが輝いている。 自分の指にも同じものがあるのだと気がついたときには涙が出ていた。 「うれしい…パパ…」 ぽろぽろ涙を流しながらパパに抱きつきパパは優しく背中を撫でてくれた。 その後パパはぼくの頬を伝う涙をチュッと吸い、そのまま唇に口付ける。 パパの大きな舌が口の中を優しく撫でてくるので、ぼくはパパのスーツを握りしめていた。 「で、どうなんだ?」 「うん。ぼくパパと結婚したい。玲ちゃんみたいな可愛いお嫁さんじゃないけれど、パパのお嫁さんになりたい…」 「命は命のままで良いんだよ」 ぼくに拒否権はないと言いつつ、優しく問いかけられぼくは嬉しくてパパに更に抱きついた。 今度はわざと音をたてる様にくちゅくちゅとキスしてくるパパにぼくは苦しくなってくるが、懸命に舌を絡める。 「おっと、それで翔のことだよ!」 「パパぁ?もっとちゅうしてぇ?」 「もう…こんなぶりっこ何処で覚えてきたんだ?」 「えへへ♪」 あざといと自分でも分かっているが、きちんとおねだりに応えてくれるパパにキスしながら目を細める。 どんどんお尻もむずむずとしてきて、パパを見上げるがパパは首を横に振るのでぼくは思わず頬を膨らませてしまう。 「あのね…パパもぼくのお誕生日くれる?」 「もちろん何でもあげるよ」 パパがぼくをぎゅっと、抱きしめてくるのでぼくはソファーの端にある翔ちゃんの鞄を引き寄せる。 悪いと思いつつ、そこからタブレットを取り出すとパスワードを入力していく。 待ち受け画面が表示されたところで、ぼくはそれをパパに見せた。 「ぼく…理くんがほしいの」 「理くんって…店で最後に命の面倒見てくれた子だな」 ぼくは頷いて、待ち受け画面に表示されている二人を撫でる。 翔ちゃんの話では理くんはバイト先の後輩だったが、二年生の途中で学校にも来なくなったそうだ。 ぼくは事の真相を知っていたが、翔ちゃんには何も言えなかった。 「前にこの写真を見てた時は、理くんに似てるなって思ってただけだったの。でも、翔ちゃんに抱っこをされながらこの写真が見える度に理くんを思い出して辛かった…」 「その理くんは何で店に?」 「理くんは何も言わなかったけど、巽に聞いたらお母さんがギャンブルしてるんだって」 「ギャンブルかぁ…」 パパはソファーの背もたれに身体を預けながら顎に手をやり、考え事をしているようだ。 「多分店に行って、身請けを申し出ればすぐに引き取れると思うけどいくら吹っ掛けられるかわからんなあ…」 「ぼくのお金で足りるかなぁ??」 「命はそんな心配しなくていいんだよ…」 ぼくはお店を卒業するときに特別報酬が入った通帳を3冊貰った。 それに、パパはお仕事が順調らしくお店の売上があんまりあるとパパのお兄ちゃんに怒られるからと少しぼくの名義にしてくれている。 そのお金をいつでも使える様にカードも持たせられている。 だからそれを使えばいいのでは無いかと思ったのだけれど、パパは気にするなと言ってくれた。 「ぼく…家族がほしかったの」 「だから翔と理くんか?」 「そうなの!!」 「命には完敗だ…でも、理くんはいいとして何で翔もなんだ?」 パパの問いかけにぼくはにっこり微笑んだ。 「家族は沢山のほうが楽しいでしょ!」 「そうだな」 ぼくの言葉に、パパも滅多に見せない優しい笑顔を見せてくれた。 ぼくはそれが嬉しくてまた顔をパパに寄せる。 「なら、俺の嫁さんは俺の相手はしてくれるの?」 「ぼくお嫁さん?」 「そう。起きたら書類書いて手続きしてこよ?」 「えへへへ」 パパの言葉にぼくは嬉しくてパパの手をぎゅっと握った。 本当に幸せだ。

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