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狼は腹の中05
急ピッチで進めた原稿もなんとか完成させて、入稿まで無事に終わった。
翔がリビングのテーブルで勉強しているのを眺めながら俺は料理をしている。
俺も凝り性な性格のお陰で、だいぶ料理も板についてきた。
翔も料理はできるらしいのだが、本当に簡単な物だけらしい。
まだ命が元気だった頃に玲ちゃんが命に料理をさせようとお菓子作りを始めたのだが、大惨事に終わった。
命曰く、店でクッキーは作ったことがあるそうだがキッチンの惨状と玲ちゃんの絶望的な顔は今でも忘れられない。
それ以来、あんなに穏和な玲ちゃんにすら“みことちゃんは息だけしてくれればいいよ”と言われる位センスが無いことが分かった。
「いい匂いですね」
「玲ちゃんには敵わないけどね」
俺が鍋を焦げないように混ぜていると、翔が対面式キッチンの向かい側から俺の様子を見にきた。
「今日は何を作ってるんですか?」
「命の好きなトマトスープと、俺と翔は肉のメインで、命は魚だな」
俺は一旦火を止めてキッチンを後にした。
まだ食事をするには少し早い。
命は帰ってくる最中に完全に寝てしまったのでベットに寝かせてある。
後で起こしに行って、起きなければそのまま寝かせておけばいいだろう。
「勉強はもういいのか?」
「あ、はい!レポートも終わったんであとはテストだけですね」
俺は冷蔵庫からサーバーを取り出しグラスを用意する。
部屋の中に居ると暑さは感じないが、冷たい飲み物はビジュアルだけで涼しげだ。
翔とリビングのソファーに移動して、アイスコーヒーを飲みながら翔がぽつりぽつりと話すバイトや大学の話に耳を傾ける。
「楽しかったんだな」
「えっ…あの…」
ニコニコと話す翔の頭を撫でてやると、動きがピタリと止まる。
少し恥ずかしそうに俯いた翔の腰を抱いて顔を近付けてやると、ぎゅっと目を閉じる。
まだまだ初心な翔の反応は、何度か命や俺と肌を交わしていても変わらない。
「ふぁ…博光さん」
「ふふふ。やっと名前呼んでくれた」
「あ、えへへ」
舌を絡ませ合うキスをした後に俺が笑うと、それにつられて翔が照れくさそうに笑う。
しばらくソファーで翔の相手をして、気がついた時には翔の服は乱れ色っぽい息を吐いていた。
俺の手は白濁した液体で濡れているし、翔の口元は互いの唾液でテラテラと光っている。
「ちゃんと自分でしてる?」
「はぁ、はぁ、元から…そんなにしてません」
俺は自分の掌を汚している精液の濃度と量を見て、心配になった。
元々翔が性に対してすごく淡白だったのは知っていたが、相変わらず量も多く濃度もある。
「まだ自分でいじるのは抵抗あるよな」
「う…」
俺が納得した顔で後ろの孔の縁をなぞると、きゅっと収縮する。
「今ローション持ってくるから、少し自分で弄ってまってて」
「そんな…こと」
俺は翔の手を取り、下半身に持っていってやるとそのまま自分のモノを握らせてやる。
手を上下に動かしてやると、なんやかんや言っても刺激には勝てなかったのか俺が手を離しても自分で扱きはじめた。
ソファーで夢中になっている翔を置いて俺はベットルームに向かう。
「命?ごはんたべないのか?」
「うにゃ、むにゅ」
ベットの上でぬいぐるみを抱いて丸くなっている命に声をかけると、犬のぬいぐるみの頭に顔を埋めてまた寝息をたてはじめた。
起きる気のまったくない命はそのままに、俺はローションのボトルを持ってベットルームを後にする。
「こっちはこっちで盛り上ってるな」
リビングのソファーでは翔が上着の端をくわえて、下半身を刺激しながら自分の胸を弄っている。
乳首も学のせいで感じる様になってから俺も面白半分に弄ってやっていたせいで最近では益々感じるようになったようだ。
「翔乳首気持ちいいか?ほら、ローションだぞ?」
「ひろみつさ…」
「ふふふ。2回目だもんな」
くちゅくちゅと音をさせながら刺激しているのだが、流石に1度俺の手の中で果てた翔は中々先が見えず腰がゆらゆらと動いている。
ローションのボトルを目の前で揺らしてやると、とろんとした顔で俺の胸にすり寄ってきた。
「すっかり素直になったな…」
「ひっ!!」
掌にローションを垂らして少し手の中で温める。
指先に絡めたローションを孔に擦り付けてやると、待ってましたとばかりに収縮をしていた。
「ひあっ!!あぁぁ」
そのままゆっくりと指を1本沈めてやると、すんなりと中に飲み込まれていく。
中はあまり使っていないせいか、命と違って力一杯締め付けてくるのが新鮮だ。
「ひうっ!!」
「ほら、力抜いて~」
「む、むり…そんなこと…できなっ」
無遠慮に指を上下に動かしてやると、俺の着ているTシャツをぎゅうっと握りしめてくる。
俺はキスをしてやりながら孔と、ついでに乳首も弄ってやった。
身体を小刻みに震わせて感じている翔が面白くて更に指を増やして動かしてやると、部屋にはぐちゅぐちゅと厭らしい水音が響いている。
「乳首も気持ちいい?」
「んっ…ひろみつさっ…」
服の上からでも反応している乳首が分かるほどぷっくりと主張をしている頂を指先で撫でる。
すると孔を締め付けながら俺の肩に頭を擦り付けていた。
「もう我慢できない…いい?」
「は…い」
俺はスラックスを下着ごと脱ぎ去ると、反応しているペニスにコンドームを被せる。
手についているローションと、ボトルからも追加で絞り出して自分のモノに塗りつける。
ゆっくりと翔の入口に宛がうと、少しづつ腰を進めていく。
「うぅぅぅ」
「だいぶ入るようになったね…えらいえらい」
3分の1程が翔に埋ったところで、俺のモノが潰れるのではないかと思うほどの力で締め付けてきたので腰を止める。
労るように頭を撫でてやると翔の顔がみるみる嬉しそうな顔に変わり、ふにゃりと笑った。
翔は褒められたり、こうやって甘やかされたりしてこなかったのか俺が少し甘やかしてやるだけで従順になる。
俺も無理に押し入ることはせずに、浅いところをゆっくりと刺激する。
「んっ、んんんっ」
「翔はとってもいい子だよ」
俺の言葉でどんどん蕩けた顔になっていく翔を眺めながら小刻みに腰を揺らしてやる。
途切れ途切れに声を漏らす翔をなだめる様にキスをしてやると、甘えた様に首に腕を絡めてきた。
素直に甘えてくるようになった翔を甘やかしてやりながら夜はふけていった。
「パパさん!パパさ…ひろみつさん!!」
「ん~どうした…翔?」
慌てた様子の翔の声に俺は目を覚ます。
枕元のスマホを確認するともうじき昼になるところだった。
翔の慌てぶりにのんびり身体を起こす。
「命くんが!」
「命がどうした?」
「命くんが家の中に居ません!!」
「は?」
翔の一言で俺は飛び起きて、呆然としていた翔の横をすり抜けリビングに向かった。
リビング端の専用スペースには当然姿はなく、他の部屋も探してまわる。
客室のベットの中、バスルーム、トイレ、クローゼット、俺の趣味の部屋、仕事部屋の各部屋を必死になって探したが命の姿は何処にもなかった。
「居ましたか?」
心配そうな翔の言葉に俺は首を横に振る。
俺の元に戻ってきて今まで命が一人で何処かに出掛ける事など無かったので俺は動揺を隠せなかった。
「命くん何処に行っちゃったんでしょうか?」
「分からない。何で居なくなったのか…あ、そうだ!」
俺はあることを思い出してすぐにパソコンを立ち上げた。
すぐに専用のサイトにアクセスして命の子供用携帯の位置情報を確認する。
「くそっ…電源が切れてる…」
パソコンの画面には3Dの地図情報が表示されているが、電源を切っているのか命の携帯の反応がない。
俺は焦りから親指の爪を噛んだ。
昔からイライラしたり、不安だと親指の爪を噛む癖があった。
その癖も最近ではなりを潜めていたのだが、思わず出てしまっている事に俺は気が付かない。
「俺、親父に電話してみます!」
「俺も思い付く限り連絡してみる!」
翔がスマホを取り上げて電話をしはじめたので、俺も思い付く限り連絡をしてみた。
俺の実家になど行くとは考えられないが、一応連絡を入れてみる。
家政婦の人が出たが、こっちには来ていないとのことだった。
俺は洋裁教室のお礼を軽く言って電話を切る。
「うちには来てないみたいです…」
「何処に行ったんだ…」
翔が残念そうに首を振るので、俺のイライラも募る。
一応兄さんの部下に探すように頼んであるので、見つかるのも時間の問題だがやはり本当に見つかるまでは落ち着かない。
「大丈夫ですよ…命くんきっとそんなに遠くに行ってませんって」
リビングのソファーで項垂れている俺を慰める様に、翔は肩にぽんと手を置いた。
俺はそんな翔を引き寄せ腹に顔を埋める。
背中をポンポンと叩かれ、翔に慰められてしまったが、命がまた居なくなってしまったらと考えただけで気がおかしくなりそうだった。
~♪
ノートパソコンにメールが入って来たのは3時を過ぎた頃だった。
俺は落ち着かず、気を紛らわせようと仕事をしていたのだが直ぐに中断してメールボックスを開く。
「はぁ~」
「命くん見付かりましたか??」
大きく溜め息をついた俺に気がついた翔も勉強を中断してこちらに来た。
メールには、10分ほど前に命が花吹家に入ったと書いてあって俺はひと安心する。
命は大きな荷物を持っていたらしく、買い物をしていたらしい。
「ははは。やられた…」
「どうしたんですか?」
俺はそのメールを不審に思ってカードを入れている財布の中を確認する。
カードが1枚無くなっていて、変わりに命のカードが入っていた。
命にも買い物用にカードは持たせてあるが、あまり使わないので限度額を低く設定していた。
それが俺のカードと入れ替わっており、独特の字で“ひろみつさんのバカ”と書いてある紙と一緒に入っている。
これは俺を心配させた罰と、勝手にカードを使った罰としてキツいお仕置きが必要だなと思った。
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