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狼は腹の中06

命の居場所が分かってひと安心した俺はとある事を思い付いた。 「もしもし?圭介…命を知らないか?そうか…」 すぐに出掛ける準備を整えてから改めて圭介に電話を入れる。 命がまだ見付かって居ないように少し心配した様な声色をつくって圭介に命の所在をたずねたのだが、圭介は少し詰まりながらも知らないと答えた。 これは圭介にも制裁を加えねばならない。 俺を出し抜こうなど百年はやいのだ。 「命くん見付かってよかったですね」 「そうだな…」 翔は嬉しそうに帰る準備をしていた。 週に1回でもいいのでバイトに来て欲しいと頼まれ、未だに居酒屋のバイトを続けている翔はこの後職場に向かうそうだ。 俺は命を迎えに行くために一緒に家から出た。 翔がバイトに行く際は必ず送り迎えを徹底しているので、翔も俺の車に素直に乗り込む。 「命にはちょっと説教するから、迎えにはいけないけど大丈夫?」 「子供じゃないんですから平気ですよ!」 翔はにこやかに答えたので、俺は申し訳ない気持ちで頭をぽんぽんと軽く撫でる。 徹底的に紳士を装い接して居るので、甘えベタだった翔も素直に甘えてくるようになったし、こんな風に軽口も言って来るまでに進歩した。 「あんまり命くんの事怒らないであげてくださいね?」 「なるべく努力はする」 花吹家の最寄り駅の近くのロータリーで翔をおろした。 命を心配する翔は後ろ髪を引かれるのか、俺の車を気にしつつ人混みの中に消えていく。 俺は無理矢理作っていた表情を緩めると、大きく溜め息をついてスマホを操作する。 次男の部下達には今度何か差し入れを持っていこうと思う。 そう言えば学の事も任せきりだし、今回の件でも迷惑をかけたなと反省をした。 「さぁ命…俺を怒らせた罰をたっぷり受けてもらうからな」 俺はぼそりと独り言を呟きながらギアを変えてアクセルを踏み込んだ。 駅から花吹家の住むマンションは目と端の先と言っても良いほど近い距離にある。 来客用の少し離れた駐車場に車を停めて、俺はトランクから持参した荷物を取り出す。 荷物の入った袋を肩にかけて足早で目的の部屋まで向かう。 ピンポーン♪ インターフォンを押すと中からパタパタと軽い足音が玄関にむかって聞こえてきた。 「はーい」 「こんにちは…あ、こんばんはかな?」 ドアが薄く開いたところで、ドアの隙間に足を押し込む。 兄さんの仕事の手伝いでよく使う手だが、こんな知り合いの家で使うことになるとは思わなかった。 出てきた玲ちゃんは一瞬驚いた顔をしたが、相手が俺だと分かるとすぐ笑顔に変わってチェーンを開けてくれる。 「みことちゃんどうしたの?いま、圭ちゃんとお話中ヨ?」 「俺にも分からないんだよね…」 玲ちゃんは俺を快く出迎えてくれたが、命から事情は聞いていないのだろう不思議そうな顔をしている。 スリッパを出してくれる玲ちゃんの手が目にとまり、左の薬指の指輪がキラリとひかっているのが見えた。 「ありがとう…俺も命に理由を聞いてみるよ」 「え…」 俺は出してもらったスリッパに足を入れて、玲ちゃんの左手をさっと掬い上げる。 左手から指輪を奪い去り玲ちゃんの目の前にかざす。 「返して!」 「こっちの玲ちゃんは、はじめましてかな?」 「それ…かえして!!」 玲ちゃんは指輪を外すと命が居た質屋での辛いことを思い出してその感情を押さえるために全く別の人格になる。 解離性同一性障害、分かりやすく言えば二重人格というやつだ。 現在指輪を外す事も滅多にないだろうから、症状がどういう状態かは賭けだったがこのぶんだと症状は良くなって居ないようだ。 「何?あの子じゃダメなの?意味わかんない」 しばらく放心していた玲ちゃんだが、俺がポケットに指輪を放り込むと諦めたのか大きな溜め息をついた。 以前読んだ資料には、圭介と暮らすまでは随分奔放で荒れた生活をしていたと記載されていたので全く別人格と言うよりこっちが本当の玲ちゃんなのかも知れない。 そして“あの子”とはもう一人の玲ちゃんの事だろう。 「今の玲ちゃんじゃ優しすぎるからね」 「レイならいいの?」 玲ちゃんは普段だとふんわりと花が綻ぶ様に笑うのだが、今は口許だけ歪に引き上げニヤリと笑う。 俺はここまで違う雰囲気に、驚くよりも感心してしまった。 「指輪のない玲ちゃんは怖いって命が言ってたから、会ってみたかったんだ」 「意味わかんない。早く指輪返して」 玲ちゃんは俺の話を聞いていなかったのか片手を差し出して指輪を返すように迫った。 しかし俺は1歩退いて首を横に振る。 「命のお仕置きを手伝ってくれたら返すよ」 「は?」 玲ちゃんは腕を組んで嫌そうな顔をした。 流石にもう一人の玲ちゃんでも命に何かするのは気が引けるのかも知れない。 「ママに怒って貰おうと思ってね」 「ママ…レイ…ママだもんね」 俺は先程の言葉ではいけなかったのかと言い直すと、玲ちゃんはブツブツと何かを呟きつつ俯く。 「分かった。レイは何をすればいいの?」 何かを納得したのか、パッと顔を上げて先程のニヤリとした笑いを浮かべる。 俺は心強い味方を手に入れた瞬間だった。 「まずは、これ着てリビングに来て?」 「OK」 俺は玲ちゃんに鞄から着替えを渡すと、玲ちゃんはそれを持って近くのバスルームへと消えていった。 それを見送った俺は足音を立てないようにリビングへと向かう。 そこでは命が圭介の膝に乗って頬を膨らませていたが、パチリと目が合った瞬間に固まったのが分かる。 「玲…遅かったね…誰だった?」 「よぉ。圭介」 呑気にテレビを見ていた圭介が振り返ったのと目が合って俺はニヤリと笑う。 圭介も一瞬身体が硬直したが、すぐに立ち上がろうと身体を浮かせる。 その動きを見て、俺は走り出す。 「うぐっ」 「俺に前の仕返しのつもりか?格下の癖にいい度胸だな?」 圭介の脇腹に一発拳を撃ち込んでソファーに沈める。 かなり前の話だが、玲ちゃんが圭介と喧嘩して家出をしたことがあった。 俺の家に避難してきた玲ちゃんと圭介の仲を取り持つために圭介には玲ちゃんの居場所をギリギリまで知らせなかった事がある。 それの仕返しのつもりで俺に命の居場所を知らせなかったのかと思うと腹立たしい。 「そん…な…こと…」 「お前が不用意に匿ったせいで今から命と玲ちゃんがひどい目に合うのを、お前は指をくわえて見てろ。それがお前への罰だ」 息苦しそうに脇腹を押さえる圭介に吐き捨てると、ブルブルと恐怖に震える命の服を引き裂く。 ビリビリと音を立てて服を引き裂いていくと、命の傷跡だらけの身体が露になる。 「俺の肉孔の癖に、俺から逃げられると思うなよ?」 「ご、ごめんな…さ!!」 耳元で何時もより怒気を含めた低い声で囁くと、命が震え上がる。 手早く持ってきた拘束具を着せて、首にはハートのパーツが可愛らしい拘束具と同じペパーミントグリーンのレザーで作った首輪を取り付けた。 首が絞まらない程度にきつく首輪も拘束具も締め上げたところでM字に足を開かせて床に転がす。 「圭介には止められたら困るからな」 「若旦那…」 ダイニングから椅子を1脚引きずってきて、そこに圭介を後ろ手に縛り付けた。 玲ちゃんの指輪を外した姿を見たらどんな反応をするか楽しみだ。 「これであってる?」 「いいところに来たね」 着替えが終わったのか玲ちゃんが機嫌良さそうに帰ってくる。 玲ちゃんにはローズピンクのレザーで作ったボンデージを身に付けてもらった。 命と違うところは、ローライズのパンツと胸を隠す為の布があるところだろうか。 何時もと違う勝ち気そうな表情は、正に女王様と言った感じだ。 「玲…」 「センセ…ゴメンネ」 圭介は何時もと雰囲気が違う玲ちゃんに戸惑いを隠せない様だ。 玲ちゃんは圭介の顔を見ることなく俺に近づいて何をすれば良いのかという顔をしている。 「ちょっと待っててね…今準備するから、命を気持ちよくしてあげてて」 「れいちゃん」 「だいじょうぶよ…ママがやさしくしてあげるからね」 俺はカメラのセッティングをして、透明なビニールシートを広げる。 命が不安げに玲ちゃんを見上げたところで、笑いながらお互いの顔が近付いていく。 その様子をカメラで捉えつつ俺は準備を進める。 椅子に固定した圭介は心配そうにお子様達の様子をうかがっていた。 「れ…いちゃ…」 「みことちゃん…またお胸大きくなった?」 キスの合間にうっすら膨らんだ胸を鷲掴みにされた命の身体が大きく跳ねる。 そのまま乳首もつまみ上げられ、上につねりあげられている。 「れいちゃん…いたっ」 「みことちゃんは痛いの好きでしょ?」 「へん…れいちゃん…どうしたの?」 胸を乱暴に扱われ戸惑う命の視線が、玲ちゃんの指に注がれたのをカメラはしっかりととらえていた。 命は驚いて俺を探している。 「命…これは全部お前のせいだよ?」 「そんな!」 俺と目が合うと、俺は無表情で命に言い放つ。 玲ちゃんの指輪を外したのも、圭介を動けない様にしたのも全て俺だ。 しかし、そうさせたのは全て命が家出をしたからに他ならない。 「女王様…これを…」 「つけて」 カメラのセッティングも終わった事だし、遂にこれからが本番だ。 玲ちゃんに肘まである医療用のゴム手袋を差し出すと、目の前に玲ちゃんの腕が伸びてきた。 玲ちゃんも女王様役に心なしかノリノリになっている。 俺は玲ちゃんの華奢な手に手袋を装着してやり、もう片方の手にも同じように装着してやった。 「黒のラバー手袋の方がよかったな…」 「これ何でこんなに長いの?」 俺が手袋を着けた玲ちゃんを改めて見ると、黒のラバーの方が雰囲気があって良かったのではないかと思い始める。 しかし、今日は別の目的があるのでまた機会があれば着てもらう事にしよう。

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