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一人でできます!5

俺はベッドルームから出るとリビングのソファにどっかりと座り込む。 パソコンの操作を片手でしつつ、空いた手でスマホを取り出して電話帳を開く。 プルルルル 『はい』 「あ、翔?」 『パパさんお疲れ様です…どうかしましたか?』 「課題の進捗はどうだ?」 『もう少しで終わりますよ。これが終わればまたそちらでのバイトにお世話になりたいです』 今の時期、夏休み前のレポートが佳境に差し掛かっている頃合いだろうと電話をしてみた。 案の定もうすぐ終わりそうという事なので、俺は電話口でニヤリと口角が上がるのを感じる。 「実は折り入って頼みがあってさ」 『え?そうなんですか?』 俺はわざとらしく申し訳なさそうな声を出してみると、案の定少し心配そうな声が聞こえる。 なんとか笑うのを我慢しつつ話を続けた。 「レポート提出したら、すぐに動画編集のバイトしてもらいたいんだよね。実は、なる早でお願いしたいんだけど大丈夫?」 『それは大丈夫なんですけど、なる早ってどれくらい早くですか?』 「できれば今すぐ位でもお願いしたいんだよ。命の動画なん…」 『レポートすぐ終わらせるので、これからお伺いしてもいいですか?』 命の名前が出た瞬間に、俺の言葉を遮る様に話始めた翔に俺は笑いを堪えるのがどんどん辛くなってくる。 腹に手を乗せてなんとか気持ちを落ち着かせようとするのだが、Tシャツが千切れそうになるほど掴んでしまった。 「おね…んふっ…お願いできる?」 『こちらこそお願いします!』 声が震えるのだけはなんとか堪えたが、少し笑いが出てしまった。 しかし、翔は気にする事なく返事をしてきたのでもう一度お願いしてから通話を切る。 通話が終了したのを確認すると、声を出して笑ってしまった。 そんなあからさまな態度をとるとは思ってもいなかったからだ。 「おっと…仕事部屋のカメラの電源確認しておかないといけないでござる」 俺は慌てて仕事部屋に使っている隣の部屋に向かう。 職場が隣なのは本当に便利だ。 撮影もできるし、すぐに編集もできる。 何より生活スペースと分ける分ける事で仕事のONとOFFがしっかり分けられるのだ。 スリッパを履いて隣の部屋の鍵を持ってから玄関を出る。 鍵を開けて部屋に入ると、すぐに作業部屋へ向かった。 家にもカメラは仕掛けてあるが、この部屋は撮影部屋も兼ねているので何処の部屋にもカメラが仕掛けてある。 しかし部屋に居ない時や、俺一人での作業の時は電源を切っているのでこんな明らかにネタが自分から来るのに準備しない方がおかしいだろう。 むしろ、こんなチャンスを逃がすなんて商売してる意味なんてない。 そんな奴は商売なんて辞めちまえとさえ思う。 くだらない事を考えながらパソコンに電源を入れる。 「えーっと?」 パソコンが立ち上がるまでの間に、サンプルが乱雑に入った紙袋を引き寄せた。 こういう商売をしていると、企業の方から売り込みに来る事もざらだ。 酷いところになるとサンプルを送り付けてきてメールだけの営業なんて事もある。 そんな商品は、開けてすぐに不燃ごみ行きにしてしまう。 家業の影響なのか、俺は“縁”というのを大切にしている。 誠意を見せてくれる業者と、機械的に業務をこなそうとする業者ではやはり前者の方が強い。 いくら大手であろうと“ご縁”が無かった所とは取引をしない主義なのだ。 「これは玄人向きすぎるでござるな。もう少し優し目のは無かったでござろうか?」 紙袋が立てるガサガサという音をさせながら探して行くと、中々良いものを見つけた。 どうしても命にレビューさせるものは玄人向けの商品が多いし、客層的にも商品は買わないがレビューだけの為に有料会員になっている層も居るので手元にある商品は偏りがちになってしまう。 しかし、袋から出てきた器具は玄人向けと言うより初心者向けの細身のバイブだった。 なんなら命がさっき使っていた物と同じものだろう。 パッケージから出して弾力を確かめる為に親指と人差し指で本体の広い所を摘まむ。 「まぁ。可もなく不可もなくでござるな」 シリコン特有のぷにっとした感触に、すぐ興味が無くなり机の上に置く。 玄人向けはバカみたいに大きかったり、突起がついてて凶器の様だったりと中々胸踊るものがある。 しかし、一般向けとなるとどれも似たり寄ったりの大きさや形状になってしまう。 命くらい使い込まれた身体じゃないと玄人向けは使えないし、仕方ないとはいえどうしても食指が動かない。 ため息をついたところで、翔から連絡が入る。 確かに“なる早”とは言ったが、こんなに早く最寄り駅に着いたと連絡が入るとは思ってもいなかった。 すぐに仕事部屋に来るように返事をして、残りの準備を進める。 撮影用のベッドにもシートを張った上にシーツを敷いた。 「はぁ。ベッドメイクも疲れるから、バイト雇おうかとも思うが時間が不規則で不定期だし悩みどころでござる」 余っていたシーツをマットレスの下に押し込み、腰を軽く叩きながら立ち上がる。 シーツを変えるのも面倒なので、業者やバイトに人を雇おうかと思うのだが何分にもベッドは一台のみ、撮影の時間も不規則なので自分でやってしまうほうが楽なのだ。 翔に頼んでもいいかもしれないなぁとなんとなく考える。 ベッドで抱かれる側が期待しながらベッドメイクをするのも一興かもしれない。 ベッドメイクについては追々考える事にしよう。 ピンポーン 色々と考えていたところに仕事部屋のチャイムが鳴ったのでゆっくりと玄関に向かう。 「いらっしゃい」 「お久しぶりです!近くに居たので早くつきました」 「そうなんだ。早速で悪いけど、作業お願いしてもいい?」 「はい!」 扉を開けると、満面の笑みの翔が立っている。 予想外に早く着いたなと思ったのを読んだかの様に、状況を説明してきたので俺は頷いて中に入る様に促す仕草をした。 靴を脱いで仕事部屋に上がってきた翔を作業用のパソコンの前に座らせる。 「ファイルはいつものフォルダに入ってるから、軽く編集終わったらサイトにアップしてもらっていい?」 「わかりました!」 「ちょっと隣の部屋で作業してるからお願いね?」 「了解です」 俺は手短に仕事の指示を出して隣の部屋に引っ込んだ。 作業部屋の隣の部屋にもモニターが置いてあり、翔の様子が見られる様にしてあった。 しかし、どれだけ待っても翔がそういった事をする様子が無かったせいで片手間でしていた発注作業が終わってしまった。 翔が作業をはじめてから1時間位経った頃、モニターの中の翔が椅子からうーんと背筋を伸ばしたのが見えた。 すぐにスマホに動画が上がった事を知らせる通知が来る。 「絵的にはボツでござるぅ!!」 俺は頭を抱えたが、何も無かったのは仕方がないし翔が真面目だったということが分かっただけでも良かったと思うべきだという考えに至った。 本当に爆即で動画を仕上げてくれた翔に労いを送ろうと作業部屋に向かう。 「お疲れ様!本当に早く仕上げてもらって助かったよぉ」 「お役にたてて良かったです!」 「データはまたディスクに焼いて持って帰っていいよ?」 「あざっす」 俺は様子を観察してた事などおくびにも出さずに部屋に入る。 自分のスマホを翔に向かって掲げて、通知が来たからこの部屋に戻って来ましたというような雰囲気を出す。 動画編集のおまけとして、出来上がったデータを持ち帰ってもいいと言うと翔に凄い喜ばれた。 自分が携わった動画にしかデータの複製の許可を出さないと言っているので翔が動画編集の話に飛び付いた理由が分かる。 ロリコンの翔にはご褒美でしかないだろうと言うことが容易に想像できた。 「それにしても…毎回元気だね?命以外だとならないのがむしろ清々しいよ」 「元気?なんの…あっ!いや…これはそのっ」 翔の座っている椅子の後ろに立つと、Gパンの股間の部分がうっすら膨らんでいるのが見える。 期待外れだとがっかりしていたが、これは絶好のチャンスだ。 翔は俺の言った事の意味が分からなかったのか首を傾げたが、目線の先を辿ると膨らんでいるフロント部分に気が付いて慌てて股間を押さえる。 何か言ってるが、俺はそれを一切聞かずに翔の顎を持ち上げて軽くキスしてやった。 心の中では、拙者が顎クイとかワロスと思ったがなんとか笑うのは堪える事ができた。 「レポートで忙しかったから抜く暇なかったんだろ?」 「あの…いやっ!そうなんですけどっ」 「急いで来てもらったお礼に抜くの手伝ってやるよ」 「大丈夫です!大丈夫ですよ??」 何とか笑うのを堪えて耳元で囁いてやると、翔が更に慌て出す。 キスをした事はその後の発言のお陰なのかすっかり飛んでしまった様だ。 慌てる翔を椅子から立ち上がらせ、隣の部屋のベッドまで連れていく。 前屈みの翔の腕を引きつつベッドに座らせた。 状況が飲み込めないのか、展開が急すぎてキャパが追い付かないのか翔はキョロキョロと挙動がおかしくなりはじめる。 「折角だから、命が使ってたやつを翔も使ってみればいいんじゃないか?」 「あの…俺そんなつもりじゃ」 「えー?折角命が使ってた物を持ってきたの…」 「是非使います!いや!使わせてください!」 抵抗する翔の手を払いのけて無理やりGパンのボタンを外した俺は、先程準備した道具を目の前に差し出した。 当然新品のものだが、翔には命がと言えば必ず食いつくという確信があったので言ってみたら是非にと言うことなので使ってもらおう。 俺はにっこりとわざとらしい笑顔を顔に貼り付けながら、翔のGパンを奪って床に落とした。

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