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番外編 お出掛けは少し変わった方法で
とある昼下がり、仕事のメールボックスに取引先の企業からメールが届いた。
タイトルには『新製品アイディアの件』となっている。
この企業の営業担当さんには色々とお客様からの要望や改善点、感想などを伝えているのでお互い気楽に連絡を取りあっていた。
その営業担当さんからのメールには、新製品を開発するにあたり何かいいアイディアは無いかというかなりざっくりとした内容が書かれている。
取引先に聞くのはどうかと一瞬思ったものの、アダルト業界も競争が激しいので藁にもすがりたい気持ちも分からなくない。
仕事のメールアドレスには日に何十通という営業メールが来るくらいだ。
「うーん」
俺はそのメールを開封してから自分のサイトの未承認の投稿等をチラチラと確認したがこれといっためぼしい意見は見当たらない。
掲載できるものを選びながらどう返した物かと悩む俺の足元には相変わらず命が寝ていた。
今は俺の足の甲の上に座り、脛辺りに上半身を預けている。
天然の膝掛け用のブランケットの様になっていた。
寝ているのかぷぅぷぅと小さな寝息が聞こえる。
「そう言えば、前にお願いしてたチェアってどうなってたんだっけ?」
ふと命が寝ているのを見て、ある事を思い出した俺はそれをすぐに担当者にメールする。
10分もしないうちに相手からメール返ってきた。
試作品ならできているのだが、まだまだ改善点が多いので会社でも俺へ見せるレベルではないとの意見が多数だったと書いてある。
俺はそれでもいいので見せて欲しいともう一度メールを送った。
「えっと…今日なら空いてるな」
メールはまたすぐに返って来て、まだ未完成ですが良かったら会社に見に来ませんかとお誘いを受ける。
都合のいい日程と時間が書いてあったので、俺はスケジュールを別画面で開いて予定を確認した。
今日なら見に行けそうだとメールを返したところで着替えようと椅子を引く。
必然的に俺の足に乗っている命も一緒についてくることになる。
「よいしょっと」
俺は前屈みになって命の腋に手を差し込むと、そのまま持ち上げる。
胸元に抱き寄せてから、肩に顎を乗せて固定すると尻の下に手を添えてから立ち上がった。
命はそれくらいで起きるはずもなく未だにぷぅぷぅと小さい寝息が聞こえる。
「本当にもう少し肉つけてやらないと、最近命を心配するメッセージ来てるからなぁ」
サイトに掲載するレビューに顔出しはしていないがモデルとして起用している命のファンは一定数居るので体型など心配するメッセージ等も寄せられる。
ベッドルームに着いたところで、命をベッドにおろして寝巻き代わりに着ているキャラクター物のTシャツをめくりあげた。
体を見てみると、確かに以前よりあばら骨が浮いているような気がする。
胸を掴んで見ると、こちらも少し肉が落ちている気がした。
成長痛で寝込んでいた期間に殆ど食事ができなかったのが原因だろう。
一応身体を反転させ、うつ伏せにして尻を揉んでみた。
こちらはあまり変わった様に感じない。
ムニムニと尻の肉を揉んでいると、寝ているのに命の息が少しあがりはじめた。
「命…こんな事で感じてて平気か?」
たったこれだけで感じている命に、流石の俺も心配になってくる。
命は生い立ちのせいでセックス依存気味なので、寝込んでいる時でも手では抜いてやっていたし玩具も小さい物を使っていたがやはり欲求不満なのだろうか。
連れて行くつもりは全く無かったが、一緒に行けば何か製品開発のヒントがあるかもしれない。
「そうと決まれば、着替えまするか」
俺は命から手を離して、クローゼットの扉を開ける。
普段は背中を丸める様な姿勢をしているが、スーツを着ると自然と背筋が伸びる気がするのはなんでなのだろうか。
どうしても俺の体格に合うスーツがないので、オーダーメイドしたり海外から取り寄せたりしているのは不便であるが全てにこだわりがあったりする。
「今日はどのキャラのを着るでござるかねぇ」
普段は命がコーディネートを考えるのだが、肝心の命は寝てしまっている。
実は俺のスーツは全てアニメやゲームのキャラクターをイメージしてデザインをしていた。
裏地にキャラクターのエンブレムを入れたり、キャラクターのイメージカラーや衣装のデザインを取り入れたりとこだわっている。
海外から取り寄せた物は、そのキャラクターっぽいと思って選んで買っていたりしている。
命もそれを知っている筈なのだが、コーディネートにはことさら五月蝿いので組み合わせはその日によって上下で別キャラクターと言うこともある。
まぁ、命が選ぶとお洒落なのは確かなので俺も止めようとは思わない。
「今日はユーミルでキメまするか!」
俺は真ん中程にあった紺色のスーツを取った。
裏地はダークな紫色でユーミルのエンブレムが内ポケット部分に刺繍がしてある。
スラックスも裏地はジャケットと同じ色でユーミルのスカート飾りをイメージしてポケットのカッティングがされていた。
それにベルトやネクタイなどの小物も出してから着替えをはじめる。
「こんなもんでござるか?」
ジャケット以外を着こんだ時点で今度は命の着替えをさせる。
命用の服を棚から出して着せていく為にとりあえずパンツを履かせる。
命は寝る時は俺の痛T以外は何も身に付けていないので、寝ている命に服を着せる時は下着から着せなければいけないのだ。
パンツとブラジャーをつけて次にキャミソール、ハーフパンツと次々に着せていく。
最後にニーソックスを履かせてミッションコンプリートだ。
「さぁ。もう返事が来ているころでござるね」
俺はスマホでメールを確認すると、営業担当さんからお待ちしておりますと返事が来ていた。
その返事を見て、俺は仕事用のビジネスバッグにスマホを放り込んでから命を抱き上げる。
「さぁ。楽しみになってきたでござるなぁ」
地下の駐車場まで来て、命にシートベルトをかけてから俺は軽い足取りで運転席に座る。
エンジンをかけ、車を発進させた。
車の中は現在爆音でアニソンがかかっているが、命はまだ眠ったままだ。
いつもの事なので俺も気にしない。
「命?起きなさい」
「うーん」
目的地に着いたので、命の肩を揺すってみるがうなり声をあげただけで目を覚まさない。
仕方がないので、服の上から乳首を探してぎゅっと力を込める。
すると、命の体がビクンと跳ねてうっすらと目が開く。
「命おはよう」
「ひろ…み…」
「“仕事”なんだけど、起きられるか?」
「う…ん。だいじょうぶ」
“仕事”と言う言葉に反応したのか、寝起き特有のかすれ声ながらパチッと目が開いた。
のっそりと身体を起こす命の背中に乳首を摘まんだ手を離して流れるように支えてやる。
命を抱き上げてから車の扉を閉めた。
今日ついたのは、町工場といっていい程の倉庫のような建物だった。
入口に近付くと、ちょうどうちの営業担当が事務所のある2階から降りてくるのが見えた。
「美世さんお疲れ様です!」
「笹木さんもお疲れ様です」
うちの営業担当の笹木さんがにっこりと笑いながらガラス戸を開けてくれた。
俺の顔を見て笑顔を更に深くする。
ここの企業は、現在はクラブと名乗っている幼馴染みの会社でもあるのでかなり融通も利く。
開発は別のところでしていると聞いているので、今日俺が赴いたのは商品を製造している工場だった。
商品を開発するラボの場所は極秘なのだと言っていた。
俺も特に知りたくも無いので聞こうとも思わない。
「お呼び立てしてしまって申し訳ありません」
「気にしないでください。こちらこそ開発途中なのに、無理を言って申し訳ありません」
「提案いただいてからお時間かかっているのは事実ですから…」
お互い営業トークをしつつ、工場の2階に上がっていく。
チラチラと俺に抱き上げられている命を気にしているのが見てとれるので、製品を見せてもらう前に自己紹介をさせることにした。
「営業さんに会うのははじめてだな。笹木さんスミマセン紹介遅れました。うちの看板モデルのMです。一応私とは夫夫 で命といいます」
「モデルのMこと美世命です!いつもキモチイイいいのたくさんありがとうございまっす!」
「こんな見た目ですが、法令遵守の年齢ですのでご安心ください。命…営業担当の笹木さんな」
命を床におろし、笹木さんに命を差し出すと何を思ったのか目元にピースを当てて自己紹介をして見せた。
笹木さんは一瞬ポカンとしていたが、小さくよろしくと命に挨拶をしている。
笹木さんも一応クラブの例のチームのメンバーらしいので、命の見た目に何も言わないとは思っていたが独特の自己紹介に驚いただけで何か言うことはなかった。
流石の俺もその自己紹介は何だよなんて思ったりもしたが、黙っておく。
「早速ですが、一応こちらが試作品です」
「へぇ。結構できてるじゃないですか」
「それが…ある程度はできてるんですが、動力に使う電源の供給をどうするかが問題なんです」
「確かに」
案内された先にはチャイルドシートの様な物が置いてあり、明らかに淫具と分かる張型が座面からそびえ立っている。
笹木さんの言った通りどうやって相手を座らせるか、設置する場所や、電源の確保など問題は山積みの様に見えた。
「これ、ひろみつさんがいってたチャイルドシート?」
「車でそういったプレイ動画もいいかと思ってな」
「おへやでゴーグル?つけてするのじゃダメなの?」
「あっ!その手がありますね!」
命の発言に笹木さんは顔を輝かせて、すぐにジャケットからメモ用紙を取り出すと何か書きはじめた。
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