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第8話
“七琉ちゃん、今日からお前俺のペットな”
一瞬なにを言われているのか理解できなかった。
ペット?ペットってなんだっけ……?
おれが唖然としていると、天野先輩はふっと笑った。
「なにがなんだかって顔だな」
「だ、だって、ペットって…どういう………」
「頭悪いなぁ。七琉ちゃんは、これから俺のペット。つまり、俺の狗 なの。わかった?」
「い、ぬ………」
おれは思わず青ざめて首を横に振った。
勢いをつけすぎて、頭がくらくらするくらいに。
……天野先輩は、なにを考えているんだ。
おれがぎゅっと目を瞑って俯いていると、上からあまりに冷たく、刺すような声が降ってきた。
「七琉に拒否権なんてないから」
天野先輩が両手でおれの頬を挟んで顔を上に向けた。
「いいの?もし本当に拒否するなら、さっきの写真、バラまくけど」
「なっ…!」
「真面目な七琉ちゃんが、まさかあんなだなんて知られたら……友達いなくなるどころか、学校辞めることになるかもね」
天野先輩の手が優しくおれの頬を撫でる。
愛おしさを装っているのに、触れられたそこは、なぜだかぶたれたような感覚に陥る。
「……なんで、こんな、こと…」
やっとの思いで絞り出した声は、震えて掠れていた。
その声を聞いた天野先輩は、すっと真顔に戻った。
「そんなのどうでもいいんだよ。とにかく、七琉、今日から俺のペットだから。俺はお前のご主人様なんだから、言うこと、きちんと聞いてもらうよ?」
もし嫌だなんて言ったら。
そう続けた天野先輩は、おれの耳元に口を寄せて低く言う。
「…どうなるかわかってるよな?」
その先の言葉が実行されたことを想像してゾッと背筋が寒くなった。
写真をバラまかれたくない一心で、おれは、小さく頷くほかなかった。
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