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「苦労しているんだね…まだ若いのに…しっかりしていて偉いな君は」
「…や、そんな、全然っすよ!」
この反応にも慣れている
この歳で学校に通わずバイト三昧だと面接時はもちろん一緒に働いてる人達にもよく理由を聞かれる、みんな同じ様な言葉を言ってくれて…はじめこそ同情の眼差しは気持ちいいものじゃなかったけどそろそろ慣れてきた
けどこの水無瀬はお決まりのパターンでは終わらなかった
「折原君、よかったら家で働かないか?」
「え?」
話を聞くとどうやら水無瀬はこの辺りでいくつか店舗をもつスーパーのオーナーらしく、その店の何処かで雇ってもらえるのかと思いきやそうではなかった
柊吾と同い年の子供の『付き人』をして欲しいということだった
付き人といっても気難しいものではなくその子の友達として仲良くし、その子が困っていたら簡単なサポートをしてくれたら嬉しいし、その子がどんな生活をしてるのか教えて欲しいと言うことだった
水無瀬の妻はすでに他界していて、仕事で忙しい水無瀬はろくにその子供と時間が作れない…高校生のその子は難しい時期なこともあり学校での話もまともにしてくれなくて何か不満や困りごとはないか心配で心配でたまらないらしい
家を出て水無瀬邸で暮らすことが条件で、その話を受けてくれるなら一人部屋を用意してもらえて食事も三食きちんと用意をして月に給料を十五万…なにより柊吾が食いついたのがその子供と同じ高校に通わせてもらえるということだった
正直…父親を嫌いになったわけではないが少し距離を置きたかった柊吾には喜ばしい誘いだった
だから柊吾は『よく考えて決めて欲しい、いい返事がもらえると嬉しいよ』と言ってくれた水無瀬に二つ返事で『行きます!働きます!』と承諾した
冷静に考えたら怪しいだろうと言われてもおかしくない誘いだったけど、良いことをした結果で掴んだ誘いだと考えると図々しくも食いつくしかなかった。
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