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時効じゃなかった

 頭にハテナを浮かべる俺に、やつはおそるおそる、窺うように俺を見つめる。 ……なんだその小動物的な眼差しは。 「んだよ」 「……さっき、言った」 「? なにが」 「あとで、してくれるって……」 「……え?」 ……え、何を言ってるのこいつ。  いや、いやいやいや、分かる。  言いたいことは分かる。  そう、確かに、俺は言った。  もっとキスしてほしいと言ったこいつに、『あとでな』と。  そのことを言っているのか、こいつは。  あんなのはただの言い逃れで、俺はもう時効だと思って半分忘れてたから、その台詞に驚いて、後悔した。 「……まじかよ」 「いや、なのか……?」 「嫌なわけ……いや、嫌だろう、普通に考えれば……。嫌なのか、俺は……」 「? して……? 続き。今は誰もいないじゃん」  言いながら、泣きそうに腕を引かれる。  あぁ、まだ酔ってるな。  それどころか完全に目が据わってるし、むしろ悪化している。

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