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実はだいぶ酔ってる

 目、うるうるさせんなよ。  似合わなすぎてキモいと思うのに、そんな捨てられた子犬みたいな顔、甘受してしまいそうになる自分もいて、よく分からない。 「つーかお前、手洗った?」 「ん、洗った」 「……そっか。じゃあ、いいよ」  ついに俺まで意味の分からないことを言い訳みたいに言って、やつにやんわりと手を引かれるがままに、男ふたりじゃ窮屈な個室に入る。  シンとした閉鎖的なその空間は、全体的に濃い茶色と白で塗装されていて、狭いわりにはなかなか綺麗。  換気もよくて、消臭剤か、花のような爽やかな香りがする。 「ちょっとだけだぞ。あんまり長いと変に思われる」 「うん……」  甘えたようにどこか拙い返事をするそいつに、俺も少なからず興奮しているのか。  見た目の男らしさのわりには濃いまつげ。  それは間接照明のせいで目許に影が出来て、視線を彷徨わせたあとに潤んだ瞳でじっとこちらを見られたら、さすがにドキリと心臓が跳ねる。

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