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こんなはずでは

 がらにもなく緊張した。  友達だと思っていた相手とするには、かなり妖しい雰囲気のなかでのキスに。  やつの目は酒に濁っているようで、それでいて期待に輝いてるみたいにも見えて、少し背徳感に苛まれながらも、俺は熱い頬に手を沿える。  言葉なんてもう、話せなかった。 「っ、ん、ぅ……」  代わりに、さっきのとは全く違う口付けのせいで、くちゅくちゅと卑猥な水音が狭い空間を満たす。  温度さえ分からなかったあのキスと違い、やつの唇は熱く火照って、そしてただただ、アルコールの甘苦い味がした。 「っん、ん、ぁ……っ」  何度も角度を変えて貪って、時折唇の隙間から漏れだす吐息が熱くて、こいつの声がえろくて。  酒の匂いが充満してて。  花の香りなんて、すぐにどこかへぶっ飛んだ。  俺の肩を掴む手に力が入るのが分かった瞬間、こいつも興奮してんだって思ったらもう、だめで。  むせかえるようなアルコールの匂い。  今になって頭がぼやけて、酒が回っている気がする。  息遣いが伝わってきて、それにさえ手足の先まで熱く、カアッと血液が煮えるみたいな感覚になる。  身体の中心が一番熱い。 ……興奮しているんだ。  同じ男で、友達のはずのこいつに。

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