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第9話 お怒りの様子

「お~い、尚!」 俺が手を上げて声を掛けると一瞬こっちを見ただけで、プイッと視線を元に戻した。 どうやら機嫌を損ねているらしい。 あんくらいの事で、アソコだけじゃなくて本人も子どもかよ。 そう思ったけど言わない俺は賢いだろう? 側に寄っていく間に女の視線を感じる。 あ~あ~。今頃、本当なら元カノと旅行だったはずなのになぁ…。 ホテル予約してたのもキャンセルで、金返せって感じだし。 あのクソ女め。 何が『将人は私の事あんまり思ってくれてない!』だ。 充分いい思いさせてやっただろっての! めんどくせぇ~もう当分彼女とかいいや。 適当に割り切った遊べる女がいいなぁ…。 とかなんとか頭の中で愚痴ってる間に尚の並んでいる出店へ辿り着いた。 店には『ご当地コロッケ選手権・金賞受賞!!』と大きく煽り文句がある。 ん~、これは確かに旨そうだ。 「おい、尚!」 少し離れた列の横から声を掛けると、尚と周囲の人間が揃ってこちらを向いた。 他の客は俺の顔を見て、それから(誰だ、尚は?)と尚という人物の検討をつける為に見回していた。 「俺のも買っといてくれよ、2個な!」 「…」 尚は返事もせずに前を向いた。 やはり怒っている様だ。 なんだその顔は。 顔に出るとは分かりやすすぎるヤツめ。

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