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第10話 こんな顔だっけ?
近づくと周囲の客は尚の後ろに並んでいる女が俺の彼女と思ったらしい。
結構な美人、ファッションもレベル高い方か…。
確かに俺と並べば、美男美女という感じでバランスは取れてるな。
しかもこの女の俺を見る顔…今声を掛けたら絶対に上手くいくな。
いやいや、そうじゃねぇ。
今は尚だ。
女なら地元に幾らでも可愛い綺麗な子がいるだろ?
俺から無理矢理誘った旅行なのに、ここで尚を放り出す訳にもいかねぇし、女と3人というのも有り得ん。
これから1泊2日の旅行なのに、相方が機嫌悪いとかどんな罰ゲームだ?
なんとかしねぇとな。
「おいっ、尚。無視すんな」
そうして俺が掴んだ肩は男の物で、周囲の『彼女じゃないのか…』という空気を感じた。
まぁ俺の顔面見れば、皆そう思っても仕方ないか。
しかも尚は普通の顔だしな、普通の。
「…将人、離せよ」
「おお、悪い」
ついジックリ顔を見てしまった。
尚の目とか…顔ってこんなだったっけ?
そう思いながら、またジーッと見てしまった。
「将人?」
尚に訝しがられて我に返った。
「じゃぁ頼んだぞ。俺は他の買ってくるから」
俺は尚から顔を離すと、誤魔化す様に爽やかな笑顔で手を上げて「また後でな」と他の店を物色しに行った。
そして(機嫌とるなら旨いもんだよな)と、好きそうな唐揚げや作りたてポップコーンと飲み物を買って意気揚々と尚の元へと戻った。
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