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第11話 旨い物で釣る!
尚も丁度買い終わったのか、コロッケの入った袋を提げて俺を探しているのが見えた。
「尚っ!」
俺が呼ぶと周囲の視線が集まってしまうのは、イケメンの宿命だ。
そんなのはいつもの事なので、俺は平然と尚へと近づく。
尚の方はそういう訳にはいかないようで、視線を受けて恥ずかしそうに口を引き結んでいた。
…顔、面白い。
「ほら、これ。尚の好きそうな外側クリスピーな感じの唐揚げと、作りたてのポップコーンだぞ。あと飲み物も買っといた。このお茶で良かったよな?」
袋の中の好きなメーカーのペットボトルのお茶を見せると「あってるよ」とぶっきらぼうに返した。
それから唐揚げに目を輝かせているのが分かる。
「よし、時間ないし車の中で食べながら行こうぜ」
「え…、将人食べにくくないか?」
俺の掛け声に尚が神妙に訊いてくる。
食いモノのパワーは侮れないな。
機嫌も元に戻ってきた様でひと安心。
尚、すっかり釣られてるし。
「今度は山道じゃないしな。それに難しい時は尚が食わせてくれるだろ?」
そう意地悪っぽく訊くと、尚は俺の心を読んだのだろう、顔をハッとさせた。
機嫌を損ねていたのに、すっかりいつもの様子で話をしてしまった事に悔しさがあるらしい。
尚は直ぐに背中を向けて歩き出した。
「将人、早く行くよ!!ペンギン見るんだからな」
してやったりの俺に、尚は強気な発言を残してサッサと車へと歩いて行く。
「お~い、俺がキー持ってんだけど?」
言ってみたが聞こえなかったのか車まで行ってしまう。
そして案の定、待ちぼうけする尚に急かされる俺だった。
いやいやいや偉そうに呼ぶな、ふざけんな。
俺様の車だ、バーカ。
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