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橙里が働く美容室は、都心にある。お洒落な若者からモダンな雰囲気の女性や男性まで、様々な客が訪れていた。
橙里は絹のように美しい肌をしていて、色素が薄いので髪の色も薄かった。澄んだ瞳は意思の強さが表れており、それでいて優しく触れる手がなんとも繊細だった。
「ももちゃ〜ん。ご機嫌いかが?」
「……なんですか。その呼び方いい加減やめてくれねえ?」
「あらやだ! みんなそう呼んでるのにアタシだけダメなのぉ?」
「るっせえ」
口を開けばその雰囲気は正反対になり、言葉遣いも悪い。客の前でもたまにこれが出てしまうのだが、接しやすいと人気だった。
橙里に話しかけてきたのは店長の幹 だ。客や従業員からは某夢の国の黒鼠のような呼び方をされているが、その黒鼠にも失礼だしそもそも呼びたくないという理由で、橙里は苗字で呼んでいた。
女のような言葉遣いなくせにイケメンで、美容師としても腕前はかなりいい。
そのため一応尊敬しているのだが。
「今日もかわいいわぁ! もー肌ツルツル!」
「あああ近寄んな四十路!」
因みに、ももちゃんというのは百川から来ている。
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