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「ていうか、寒っ。マフラー貸せ」 「嫌」 「貸せって」 「諦めろ」 「りょおー」 稜のことを上目遣いしながらそう言うと、稜が盛大に舌打ちをしてから首に巻いているマフラーを乱暴に外す。そのまま首を締め付ける勢いで橙里の首に巻いてきた。 「ゔっ。苦しいっ」 「すぐ着くんだから我慢しろよ」 「無理。だって寒いの苦手なんだもん」 緩く巻き直してからまた歩き出す。稜から話しかけてくることは一切なく、橙里から話しかけないと会話が成立することはまずない。 橙里が発した言葉に稜が反応することもあればしない時もあるので、全ては稜の気分次第といった感じだ。 「どうする? 晩メシ外で済ませる?」 「……」 「おいこら。シカトすんな」 「おまえのでいい。外で食うとかだりぃ」 そう言ってから稜が欠伸をする。大体の人間は欠伸をする際間抜け面になるというのに、稜の場合全く間抜け面にならない。 つくづく、神に気に入られている男だと思う。

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