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耳に届くか届かないかくらいの声量でぼそっと稜が呟いた。その言葉を理解するのに時間は要さなくて、橙里は乙女のように赤面する。 「なっ、な……」 「あ?」 これは、自惚れてもいいのだろうか。 自分は稜に特別扱いされている、と捉えてもいいのだろうか。 やはりこの男の隣は居心地がいいと思ってしまう。昔誰かが稜のことを無愛想だと言った。でもそれは稜のテリトリーに無理やり踏み込もうとしているからで、ゆっくり侵入していけばどうってことない。 ──やっぱり、稜だな。 変わったのは見た目だけで、中身と橙里に対する態度は一切変わらない。 稜は裏表がないから無駄な駆け引きをする必要もなく、橙里も素でいられる。 「……僕、やっぱり金出した方がよくない?」 「なんの」 「家賃とかの」 いくら稜がそういうものに無頓着とは言え、なにも払わないというのは居心地が悪くなる。

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