28 / 527

[2]-13

「……要するに、もっと優しくしろってことだよ」 なんとなく情けなくなってしまい、やや小さめの声でそう言う。すると、稜が舌打ちをした。 「俺が優しくても気持ち悪ぃだろ」 「うーん……そうか? モテるんじゃね?」 「別に女には困ってねえよ」 「うっぜ」 橙里は女が好きだと言うわけでもないが、かといってモテたくないというわけでもない。 まあ、平然と稜がモテると言っているのは若干……いや、かなり腹が立つということだ。 (はた)から見ればただ見た目がいいだけなのに、どこがいいのか。 「……俺が女にモテてもおまえうるせえだろ」 「うるさくねえし。ただ揶揄うだけ」 「それをうるせえって言うんだろうが。髪を切ることしか能がねえのか」 き〜〜〜!! ああ言えばこう言う、こう言えばああ言う。その繰り返しだ。それは学生時代から全く変わらない。言い換えれば、まだ子どものままだということになる。 語彙力がない橙里が喧嘩が強い稜に叶うはずもなかった。稜は勝負事になるとかなりの力を発揮する。それは受験でも些細なことでも変わらなかった。

ともだちにシェアしよう!