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「……要するに、もっと優しくしろってことだよ」
なんとなく情けなくなってしまい、やや小さめの声でそう言う。すると、稜が舌打ちをした。
「俺が優しくても気持ち悪ぃだろ」
「うーん……そうか? モテるんじゃね?」
「別に女には困ってねえよ」
「うっぜ」
橙里は女が好きだと言うわけでもないが、かといってモテたくないというわけでもない。
まあ、平然と稜がモテると言っているのは若干……いや、かなり腹が立つということだ。
傍 から見ればただ見た目がいいだけなのに、どこがいいのか。
「……俺が女にモテてもおまえうるせえだろ」
「うるさくねえし。ただ揶揄うだけ」
「それをうるせえって言うんだろうが。髪を切ることしか能がねえのか」
き〜〜〜!!
ああ言えばこう言う、こう言えばああ言う。その繰り返しだ。それは学生時代から全く変わらない。言い換えれば、まだ子どものままだということになる。
語彙力がない橙里が喧嘩が強い稜に叶うはずもなかった。稜は勝負事になるとかなりの力を発揮する。それは受験でも些細なことでも変わらなかった。
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