29 / 527

[2]-14

──でも、僕は受験は上手くいかなかった。 橙里と稜が疎遠になった理由というのは、大学が別々になったことがあげられる。 高校は二人とも私立を選んだため、幼小中高と同じだった。偶然にも違うクラスになったことはなく、ずっと一緒だった。だから、互いの全てを知れた。 それが原因なのか、自分が稜に対して知らないことがあったとき、心のどこかが黒いもので埋め尽くされる感覚に襲われる。その都度稜に当たってしまったことがあった。 稜の性格上、そういうのが煩わしいはずなのになにも言わずに聞き流してくれていた。それがどれだけ有難いことか、橙里は理解できていなかった。 何年、十何年とかけて作り上げてきた関係が崩れてしまったのはあの夏の出来事だ。 あのキス以降、稜に対して通常通りに接することが出来なくなった。少し触れられるだけでその手を振り払ってしまったり、話しかけることが出来なくなってしまったり。

ともだちにシェアしよう!