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橙里に向かって手招きをし、橙里はその通りに稜に近づいていく。 稜の真ん前に立つと、稜が橙里の腰を掴み、稜の足の上に座らせた。 その一連の動きは全く無駄なものがなく、橙里は抵抗することが出来ずにいた。 「りょ……」 「力入れんな。たかがセックスだろ」 「いやそうだけど! 立場が違うからね僕。上と下じゃ全然違うからね」 「女と何回もしてるだろうが。童貞じゃあるまいし」 「ぐ……」 橙里は性欲が多い方ではないが、来る者拒まずだったため付き合っている彼女から強請られればそれに応じていた。稜が人のことを言えるわけがないのだが、橙里も稜のことを言えない。 くちびるをきゅっと結んで俯いていると、稜が厭らしい動きで顎を指先でなぞり橙里の顔を持ち上げる。 漆黒の瞳には橙里が映っていて、稜から橙里はどのように見えているのか知りたくなった。 「……キス」 「っ……」 「してみろよ」 糖度を持った稜の声が、耳にそう囁いてくる。それは身体中に響き、キスという言葉だけでもどこかが反応してしまいそうになる。

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