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一つだけわかるのは、橙里以外の人間には全く興味を持たないということ。彼の近くには女子高校生の親が座っているのに、存在を認めないかのように目を向けない。 ここは一つ、仕掛けることにしようか。 ソムリエの隣に行き、わざとらしく愛想笑いをする。 「こんばんは。ももちゃん待ちかな?」 「……」 どうやら、相手が笑っても自分も笑うという媚を売るような真似はしない性格のようだ。はっきりしていていいとは思うが、これでサービス業が務まるとは到底思えない。 ──この堅物がももちゃんを抱くって、どういう神経してるんだろ。 こちらに目を向けたのは一瞬で、すぐに前を見据える。 「ももちゃんならもう少しかかるんじゃないかな? 楽しそうだしね」 「……」 「よく笑うでしょ。君の前では笑うのかな」 これでいったいどのような反応をするのか。横目で見ると、恐ろしいほど無表情で瀬島の方を見つめていた。橙里のこともそういう目で見ているのだろうか。

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