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休憩室に行き、自分のバッグを手に取って稜の元に行こうとすると、目の前に瀬島が立っていた。棒立ちではなく壁に手を付いてモデルのような立ち姿だった。
その顔は何故か挑発的に微笑んでいて、いつもの下心があるような顔ではない。
「どうした? 瀬島さんも帰るの?」
「オレはまだ残るよ。店内の掃除とかもあるしね。ただついて来ただけ」
橙里よりもやや高い場所にある瀬島の顔が先ほどより少し優しく微笑んだ。その顔はいつものような笑顔なのだが。
──なんだろう。少し、違和感。
「ももちゃんはさ、あのソムリエに身体差し出すことに嫌悪感はないの?」
「嫌悪感って……稜は幼馴染だし、そんなの一回も思ったことないけど」
「幼馴染……ねえ」
顎に手を当て、なにかを考えている。
早く帰りたいのに、この男はなにを考えて、企んでいるのだろうか。
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