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やっと瀬島がどいてくれたので、扉を開けてからコートを羽織る。
稜が上着のポケットに片手を突っ込んで佇んでいる。その顔は不機嫌に歪んでいて、橙里でさえ話しかけるのが億劫になる。
「……スミマセン。遅れました」
申し訳なさそうな顔をつくって謝ると、舌打ちをしてからドアを開けて出て行った。慌ててそのあとを追う。
「……それなに?」
稜がボトルのようなものが入った袋を持っている。その中身を聞くと、稜が振り向いた。
「ワイン」
「へーえ。どんなの?」
「フォーティファイドワイン。度数が高い赤ワインで、辛口」
「……ふぉー……一体なにを企んでいらっしゃるのでしょうか?」
ワインソムリエだからワインのことに詳しいとは思っていたが、なにを企んでいるのかはさっぱりわからない。
辛口だの甘口だの、意味がわからない。ワインイコールカレーなのか。
「別に。馬鹿みたいに酔わせて醜態晒させてやろうと思っただけ」
「……僕に飲ませるつもりか?」
「それ以外になにがあるんだよ」
「うそ。僕があんまり酒強くないの知ってて言ってるの?」
「ったりめえだろ」
稜はかなりご立腹のようだ。
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