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「ていうか、瀬島さんになに言われたんだ? あの人に揶揄われただけ?」 「……ふぅん……瀬島っていうのか、あの男」 「……殴り込みとかやめろよ」 「しねえよ。おまえの先輩に当たるんだろ。癪だけどな」 癪という言葉を強調して言うあたり、余程腹が立ったのだろう。瀬島は人を苛立たせるスペシャリストだ。稜が苛つくのも無理はない。 ──てか、すごいお酒が進む。 つまみがおいしいのもあるだろうが、酒自体がおいしいのでどんどん飲めてしまう。 顔を触って確認してみると、頬が火照っているような気がした。顔が熱い。 「どうしよ……お酒が回ってきたかもしれない」 「どうせまだいけるんだろ。安心しろ、ワインはいくらでもあるから」 「わー流石ワインソムリエー……」 稜は涼しい顔をしながらジュースを飲むようにワインを口に含んでいく。ワインがよく似合う男だと思う。 橙里も、ワインを飲む。段々味覚が怪しくなり、頭がふわふわしてきたような気がした。

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