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稜も橙里のちょっとした異変に気付いたようで、橙里の隣にやってきた。 「どうした? 気分でも悪いか?」 そういうわけではないとわかっているはずなのに、橙里の反応を楽しむ為に聞いてきていることが明らかだった。 「違うもん……本当に酔ってきたの」 「は……度数高めにしておいて正解だったな」 「もー、稜ひどいよ!」 正常な判断ができなくなり、子どものような口調になってしまう。目がとろんと溶けたように細められ、顔や首筋を赤くさせた姿はかなり扇情的であった。 シャツのボタンも二つ外されていて、白い肌が稜から丸見えになっている。 「えへへ、これおいしいね」 「そうか」 「食べさせて?」 稜の胸に手を付き、上目遣いをする。稜はこのような媚びた行動が大嫌いなはずなのに、橙里のわがままを聞いてくれるようだ。 無言で差し出されたのはチーズと生ハムが重ねられたもので、舌がそのおいしさを求めて口を開いた。 稜から与えられたそれはとてもおいしくて、飲み込むのが勿体ないような気がした。

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