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腕を広げられたので近寄っていくと、ぎゅっと強い力で抱きしめられる。 自分では出せない力の強さに、思わず橙里は恍惚とした笑みを浮かべる。暖かくて、小さな気遣いが身に染みるような気がした。 そして橙里の頭の中には、小さな出来事が思い浮かんだ。 「ねえ、覚えてる?」 「……なんだ」 「僕が熱出しちゃったときに、こうやってぎゅーってしてくれたの。あのとき、すっごい嬉しかったんだよ」 体調を崩しやすい橙里の看病を、仕事で忙しい両親の代わりにいつも稜がしてくれた。そのときに、苦しくて泣いてしまう橙里のことをいつも抱きしめて安心させてくれたのだ。 熱を出す度に橙里はいつも泣いてしまい、それは高校生のときも今でも変わらなかった。 泣く度に優しく抱きしめてくれた稜に、自分はかなり甘えてしまっていたのをよく覚えている。
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