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「へえ。ここ触られたらぞわぞわすんの?」
「ひぁ……!?」
冷たい手で、撫でるように触られる。自分の手では平気なのに、何故人に触られると感じてしまうのだろうか。
耳の裏を擦られたり、耳を挟まれて弄られたり。外だということも忘れ、橙里は快感に耐えた。
「まっ……りょお……」
稜の手を掴み、見上げてから懇願するように言う。その声はかなりの糖度を持っていて、雄を反応させるのには十分だった。
稜が橙里の手を掴み、ぐいっと自分の方に引き寄せる。
そのまま歩きだし、橙里は足を縺れさせないようにしながら慌てて歩く。
「稜? どうしたの……」
「……おまえって、馬鹿だよな」
「おまっ……いきなり悪口? ええっ?」
「誰にでもそんな顔すんのか」
「そんな顔って……稜だけだよ?」
そんな顔、がどんな顔がわからなくて稜だけにしか気は許さないと思ったので稜だけ、と言う。
稜が少しだけ振り向き、橙里のことを見る。その一連の動きがあまりにスムーズで色気があって、橙里は思わず顔を背けてしまう。
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