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「ゔー、寒っ。もう冬か……」 思わずそう呟くと、稜が冷たい手で橙里の手を握る。そのまま稜のコートのポケットの中に手を入れられた。稜の手と一緒に。 ──あ、なんか温かい。 冷たい手なのに、何故か温かく感じる。それはきっと勘違いじゃない。 稜は前を見据えているものの、時折力強くきゅっきゅっと握ってくる。その動きは冷たい言動からは全く想像できなくて、優しいものだった。 ──特別、か。 稜にとって橙里は、特別な存在なのだろうか。もしそうだとしたら。 めちゃくちゃ嬉しい。 稜とこうして並んで歩いているだけでも、学生時代には堂々と出来なかったことだ。大人になるとは、こういうことなんだと思う。 お酒も飲めるようになって、煙草も吸えて、悪いことをしたら公平に罰せられて。 大人びた稜を見たときにも、時の流れというものを感じたものだ。

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