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「稜」
「……」
「なんで声出さないの?」
橙里の質問に、稜が手を止める。そのまま目だけを動かして橙里の方を見た。
上目遣いのようなことをされ、思わずどきっとしてしまう。
「……なに。俺が喘げばいいのか?」
「やっ、別に……そういうんじゃないけど」
「じゃあなに」
「気持ちよくない?」
今度は橙里が上目遣いをする番だ。顎を引いて、稜の顔を見上げる。稜がほんの少し目を瞠り、小さく息を吐いた。
「……そういうんじゃない」
「えっ? きもちい?」
「口じゃなくて手ぇ動かせ。ここ溜まってきてるぞ」
「あぁっ……!」
稜が小指で根元のまろみをぷるぷると弾く。そこは放たれる前の白濁が溜まっていて、質量を持っていた。
このままでは、橙里が先に達してしまう。
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