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痴態を見られすぎて恥ずかしくなり、顔を覆う。すると稜が首に巻かれたままのネクタイを優しい手つきで外してきた。
黒いネクタイはくしゃくしゃになってしまっていて、なんだか申し訳なくなった。
「もう……恥ずかしすぎる……」
「……なんでそんなに恥ずかしいんだよ。まだ挿入してないのに」
「稜は僕に挿れたい?」
「……」
黒いネクタイを畳みながら稜が考えている。あえて本心に迫るようなことを言ってみたのだが、どうだろう。
「挿れたいっていうより、反応が気になる。どんな声なのか、とか。どんな顔なのか、とか」
「……え」
「おまえのいろんな顔を見てみたいと思う。感じてるときも、喘いでるときも全部」
橙里の顔を見ながら、淀みなく告げてくる。その顔はいつも通りで、本当になにを考えているのかわからない。
部屋が暗くてよかったと思う。きっと、橙里の顔は真っ赤になっているだろうから。
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