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『ずっと心臓病を患っていたらしいんだけど、それが最近急に悪化したらしくて。今度の土曜日、空いてる?』 「土曜日……今のところ予約入ってないから、多分空いてる」 『それでね、稜くんもお世話になったと思うのよ。だから、稜くんも一緒に来れないかしら?』 「……聞いてみる」 『悪いわね。来るのは葬式とお通夜だけでいいわ。葬式の当日に来てくれればそれでいいから』 そこからスケジュールを確認し合って通話が終了した。 葬式に参加したことは何回もあるが、その度に本当に悲しい気持ちになる。 亡くなったということは既に喋らなくて息もしていなくて、焼いてしまえばこの世に存在しなくなってしまう。 橙里の場合親戚が多いため、幼い頃からしょっちゅう葬式があった。 その記憶は断片的で、物心ついてからは死というものがどれだけ重いことか理解し始めるようになった。そこから、人の死というものが怖くなったのだ。

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