「まあ、人が死ぬのはしょうがないことだよね。ずっと生きてても可笑しいし、死がないと人口増えてくだけだよ」 「……そうだよな」 「人がいなくなって、また誕生することでいろいろ流動していくんだと思うよ。時代もどんどん変わってくしね」 矢本が真っ当なことを言うとは思えなくて、少しだけ意外だと思ってしまっている。 確かにその通りだとは思う。 ずっと生きているなら子孫を残す必要はないし、進化もしていかない。 哲学的なことになってしまうが、世の中は人が亡くなっていくことで成り立つだろうから。 「ずっと悔やんでてももったいないじゃん。いつまでも引き摺ってんのもあんたらしくない気がするし」 「おまえ、結構言うな」 「空気読めない後輩なんで」 口にだし巻き玉子を入れながらそう言ってくる。後輩である矢本にまで心配されるわけにもいかないので、ちゃんと心を入れ替えなければ。