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「……ありがとうございました」 男性客に頭を下げ、出て行ったことを確認してから頭を上げる。 ある程度客足が途絶えたあと、橙里は奥に行って携帯を手にした。 今の時間なら稜は仕込みか休憩の時間だから、この隙に電話をかけてしまおう。 稜の両親は現在海外にいる為、葬式には参加出来ないらしい。 携帯の画面を耳に当て、稜が応対することを願いながら無機質な機械音を聞く。 何回かその音がなってから、稜の声が聞こえた。 『……なんだ』 「あっ、稜? 今大丈夫?」 『平気』 稜の声を聞くと、なんだか安心する。橙里は一人口角を上げた。 「惣作おじさんっていたじゃん」 『……ああ、いたな』 「昨日、息を引き取ったらしい」 『……昨日?』

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