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少しだけ動揺したような稜の声が聞こえた。橙里だけでなく、稜も世話になったのだ。 『……それ、冗談じゃねえよな?』 「冗談だったら電話なんかしない」 『……』 人は驚くと言葉を失うと言うが、稜もなにも言えなくなったらしい。 昨日なんて、稜と普通に生活していたのに、そんな中亡くなったというのが驚きなのだろう。 「それで、今週の土曜日に葬式があるから休み貰えない?」 『日曜もか?』 「うん」 『……わかった。でもおまえ……本当に行くつもりなのか?』 電話越しに稜の心配したような声が聞こえる。橙里は葬式が苦手で、常に誰かと行動していないとパニックになってしまうのだ。 橙里は、稜の心配を他所に言った。 「だいじょーぶ。どうせ稜がずっと隣にいてくれるんでしょ?」 『……おまえがそうして欲しいなら』 「少しくらい泣くかもしれないけど、稜がいるなら平気だよ」 本心からそう告げると、稜がため息を吐いたような声が聞こえた。

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