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こんな状況で初めて稜の髪をセットするのも不思議だが、幹が折角気を遣ってくれたのでありがたく甘えさせて頂く。
「……じゃあ、セットしていきますね」
「……」
稜もなんでこんなことになっているんだとばかりに納得いかない表情だが、無料で橙里にセットされるんだからもうちょっと嬉しそうな顔をして欲しい。
ワックスで固められた髪を櫛で解いていき、固くなったワックスを取り除いてく。
「……こんなことになるとは思わなかった」
「僕もだよ。こんな形で稜の髪をセットするなんて……」
二人で苦笑する。幹の強引なところも個性だ。責めるわけにはいかない。
二人きりで話せると思っていたが違うようで、両隣に何故か瀬島と幹が座った。
稜の顔がみるみる内に歪んでいき、内心「あー……」と思う。
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