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項垂れていると、標的が稜に変わった。 「ねえ稜くん、ももちゃんってどんなコ?」 「あ、名前稜って言うんだ」 さりげなく瀬島がにやっとしたところで、橙里は手にワックスを馴染ませる。 前髪を半分ほど後ろにかきあげ、後ろに持ってきたところで稜が口を開いた。 「泣き虫で神経質で、性格悪くて煩くて頼りない」 「……言うねえ」 「でも」 稜が言葉を区切る。思わずそこで手を止めてしまった。 「根は優しくて、いい奴」 橙里の目を見ながらそう言うものだから、橙里はつい顔を赤らめた。 それを見られたくなくて手の甲で口元を隠すと、幹が自分の顔を両手で包みながら叫んだ。 「やだあ、ドキドキするー!」 「……ももちゃんは愛されてるね」 瀬島が苦笑しながら髪を弄った。どうやら橙里と稜に対して興味が失せたようだ。

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