186 / 527
[12]-8
「すっごい男前! 高校生のときと
全然違うじゃない!」
「……久しぶりです」
「ほらほら、上がって! 康と尋もいるからね!」
喪服姿の祐子が二人の背中を押した。相変わらずの強引さは健在のようだ。
玄関に入り、靴を脱ぐ。稜が尻を向けないように靴を揃えているのを見ると、常識はしっかり備わっていることがよくわかる。
祐子に促されるまま広い居間に入っていくと、大人になった康と制服姿の尋がいた。
きっと、ちいさく舌打ちが聞こえたのは気の所為じゃない。
「……稜さん?」
康が立ち上がって稜の顔をまじまじと見つめた。稜はかなり苛ついているようだが、それを顔に出すことはしないらしい。
康は前髪を中分けにしていて、なんとも頼りなさそうだが一流企業に就職している。久しぶりに見る稜に感動しているのか、若干目がうるうるとしていた。
ともだちにシェアしよう!