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「すっごい男前! 高校生のときと 全然違うじゃない!」 「……久しぶりです」 「ほらほら、上がって! 康と尋もいるからね!」 喪服姿の祐子が二人の背中を押した。相変わらずの強引さは健在のようだ。 玄関に入り、靴を脱ぐ。稜が尻を向けないように靴を揃えているのを見ると、常識はしっかり備わっていることがよくわかる。 祐子に促されるまま広い居間に入っていくと、大人になった康と制服姿の尋がいた。 きっと、ちいさく舌打ちが聞こえたのは気の所為じゃない。 「……稜さん?」 康が立ち上がって稜の顔をまじまじと見つめた。稜はかなり苛ついているようだが、それを顔に出すことはしないらしい。 康は前髪を中分けにしていて、なんとも頼りなさそうだが一流企業に就職している。久しぶりに見る稜に感動しているのか、若干目がうるうるとしていた。

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