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「……すごく大人になられたんですね。相変わらずかっこいい」
言葉使いも丁寧になり、大人になったことを表していた。稜も少しばかり苛ついていた気持ちが収まったようだ。髪をくしゃっと握っていた。
「……おまえも、大人になったな」
「はい。出来れば……名前で呼んでくださると嬉しいのですが」
──なにぃ!?
橙里も数えるほどしか呼んでもらったことがないのに。名前で呼んでくれと言っても馬鹿にするような顔をされたのに。
稜、頼む。拒否してくれ。
だが、そんな橙里の願いも虚しく稜はゆっくりと形のいいくちびるを動かした。
「……康」
その名が呼ばれた刹那、康は破顔し橙里は項垂れた。艶のある、身体に直接響いてくる声で名前を呼ばれるなんて、同じ男でも結構くるだろう。
康は噛み締めるように瞬きをした。
「ありがとうございます。やっぱり……稜さんは素敵な男性だ」
本当に嬉しそうにゆっくりと康がそう言った。対する稜は無表情で、康の名を呼ぶことくらいなんてことなさそうだった。
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