188 / 527

[12]-10

用意されている座布団に座ろうとすると、右腕にかなり強い衝撃がきた。 「橙里くん!」 「ぅわっ!」 そのままタックルをされ、押し倒される。勿論、押し倒してきたのは尋だった。 中学生ながらの無邪気な顔が、やや雄臭さを持った顔に変貌する。 「俺に会いに来てくれたんだね。ありがとう! やっぱり橙里くんは綺麗だね」 「……尋くんに会いに来たわけじゃないけどね……一旦退こうか」 尋の肩を押し、腹の力だけで起き上がる。すると橙里の隣に稜が座り、その反対側に尋が座った。 「ねえねえ、俺かっこよくなったでしょ?」 「そうだね。五年前とは大違いだよ」 「よく一緒に出掛けようって誘われるんだけど、橙里くんがいるからだめだと思って!」 「……は? なんで僕?」 「あれ? 橙里くんって俺のものじゃないの……?」 「うーん、尋くんのものになった覚えはないけど」

ともだちにシェアしよう!