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「……おまえ、覚えてるか? 俺が前にするのは嫌かどうか聞いたとき、嫌ではないって答えたこと」
「覚えてるよ。だって、嘘じゃないし……」
「じゃあ、なんで拒む?」
「……それは」
稜だってどうしてこんなことをするんだ。
そう聞きたいけど、今は橙里が答えなければいけないだろうから、橙里は素直に答えていく。
「怖いんだよ」
「……怖い?」
「稜に身体を触られて、気持ちよくなる度に稜に嵌っていくのが怖い。それに……っ!」
言いかけたところで、稜が畳を握り拳でどんっと叩いた。差ほど大きい音は出なかったが、橙里のことを驚かせるのには十分だった。
稜の顔は見たことがないくらいに歪んでいて、自分が稜を傷つけるようなことを言ってしまったと後悔した。でも、既に遅い。
稜の顔が険しくなり、いつもは見せない余裕がない姿に何故か胸が高鳴った。
──最低だ。こんなときにもかっこいいって思うなんて……
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