194 / 527

[12]-16

「……もういい。訊いた俺が馬鹿だった。葬式前にする話じゃねえ」 「稜……?」 「早く着替えろ。あんまり遅いと不審に思われる」 そう言いながら稜は橙里に背を向けた。その後ろ姿は近くにあるのに何故か遠くに感じて、哀しくなった。 あともう少し手を伸ばせば触れられる距離にいるのに、そのあと少しがやけに遠い。 縮まりかけた距離が急に遠のいた──そんな感じがした。

ともだちにシェアしよう!