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「……橙里が? え、それ本当なの?」
千咲が睨みつけてくる。女の睨む顔というのはかなり迫力があり、そんな目を向けられるだけで恐ろしくなる。
「いやっ、そんなこと……言ったっけ?」
「ありえない! 稜くんのこと独り占めしようとしてるなんて!」
「しようとしてねえ!」
理不尽な姉の言い方に、いつものように反抗すると祐子に制されてしまう。
「こらこら。喧嘩しない」
「してないってば。橙里が……」
「は?」
「やめろっていうのが聞こえなかったのかい?」
母にはどうやっても敵わない。つくづくそう思う。
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