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「理由は?」
「へっ」
「突っ込んでたの」
そう聞かれると答えざるを得ないのだが、話したらなんとなく呆れられそうで話したくない。
でも、稜の質問に答えないなんてそれこそ不自然だろうから、橙里は答えることにした。
「……稜が最初セックスするとか言ってたからその気でいたのに」
「ん」
「稜……挿れてこないから……」
段々声を小さくしながらそう言うと、稜が少し固まってから顔を片手で覆った。
やはり呆れられたかもしれない。だが、どうやら稜は呆れていないようだ。
「……何回も聞いてるから聞かないけど、本当に嫌じゃねえんだよな」
「そう、言ってるだろ。僕だって覚悟決めてる……」
不貞腐れるように言うと、稜が決意したように目を閉じて息をふーっと吐いてから、キャリーバッグを引き寄せた。
稜が奥に手を入れて取り出したのは透明な液体が入っているプラスチックボトルで、所謂ローションというものだった。
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