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目が覚めたのは仰向けに寝ている稜の上にいるときだった。 今日は通夜。惣作と同じときを過ごせる最期の日だ。 きっと今日は泣く。たくさん泣いて、泣き疲れて寝る。 稜には、弱いところを見せてばかりだな。そう思い、退けようとすると稜が目を覚ました。 「……重い」 「今退く」 のそのそと稜の上から起き上がり、スーツに着替える為に浴衣を脱ぎ捨てた。 鏡で自分の姿を確認すると、やはりくっきりと歯型が付いていた。色も痛々しく、これを見られたらかなり面倒だろう。 キャリーバッグから念の為にと持ってきていた白い絆創膏を取り出す。 痕を隠すように貼ると、稜が文句を言ってきた。 「……見せときゃいいだろ」 「そんなわけにいかないんだって。スーツ着ても隠れないの」 「隠れねえ位置につけたんだからあたりまえだろうが」

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