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なんだか恥ずかしくなりはにかむと、女が赤くなった目で悔しそうに笑った。
「……悔しい。稜くんと過ごせるなんて」
「そうか? 結構大変だけど」
「ごめんなさい。今までの無礼、全部お詫びします。橙里くんが綺麗で、ただ嫉妬しただけだった。階段に突き落とそうとしたのも、わたし」
本当にごめんなさい。
そう言いながら女が頭を下げた。ちゃんと謝ることができる女だとは思わなかった。
自分が本当に他人に興味がないことを知り、呆れて思わず笑ってしまった。
「顔上げてよ。別に怪我とかもなかったんだし」
「……うん」
この女は、偽りの自分を取り繕うより素の方がかわいらしい。
かわいく見せようとするからかわいくなくなるのだ。まあ、そんなことを言ったら怒られてしまうだろうが。
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