ふとした瞬間、橙里が不貞腐れたような顔になる。それは稜の知らない一面を見たときで、一貫してそれも変わらない。 正直、自分のことを一番よくわかっているのは橙里だと思う。 飽きるほど一緒にいたのに、今でも稜に引っ付くようにして接してくる。 自分はそんな橙里に甘えているのだろうか。 少なくとも橙里は自分に甘えている。 橙里のことは嫌いではない。 嫌いな人間を家に居させること自体しないし、身体の関係に発達するのもありえない。 まあ、橙里に対するなにかがあるのだろうが、そのなにかを伝えるのはもう少し先でいい。 今は、まだこのままで。橙里が自分を求めてくるまでは。