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稜が橙里の為に気遣ってくれたと思うと嬉しくなる。
稜は相変わらず優しすぎる。でも、その優しさが橙里は嬉しいのだ。
「……ありがとう」
「いや」
「稜は優しいね……」
そう言いながら顔を覆う。
本当に稜に助けて貰ってばかりだ。この先、稜がいなくて生きていけるのだろうか。
稜に手を引っ張られながら車から出る。手を引かれなくても歩けるのだが、今だけは稜の手に触れていたい。
家の中に入ると祐子がもう浴衣を着ていた。紺で無地のものだ。
「あら、おかえりなさい!」
「ただいま」
「橙里と稜くんにお願いがあるのだけど……いいかしら?」
「……なんでしょうか」
祐子が言うお願いは全くいいものではない。それでも母には逆らえないのだ。
「お風呂洗いしてくれる?」
「……えっ?」
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