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橙里は、生唾を飲み込む。一度濡れた足元を見てから、また稜の顔を見た。その顔は決意に満ち溢れていて、橙里が聞いたら答えてくれそうな気がした。 「……知りたい」 稜のことを上目遣いで見つめ、そう口にする。稜が何回か息を吸って吐いてを繰り返し、橙里のことを見据えてきた。──だが。 「……っわ……!」 「っ」 稜が口を開くのとほぼ同時に、かなり大きい物音が聞こえた。それはまるで扉の開閉音のようなものだ。 かろうじて聞こえたのは「俺が……」という言葉だけだった。 扉の方を見てみると、尋と康が立っていた。 「……どうした?」 橙里がそう声をかけると、康が申し訳なさそうに眉を下げる。どうやら、康は邪魔するつもりはなかったらしい。代わりに、尋が駆け寄ってくる。 だが、邪魔してくれてよかったと思う。このまま聞いていたら、きっとまた稜にいつも通り接することが出来なくなってしまうから。 ──また、過ちを繰り返すところだった。 口を手の甲で押さえ、胸の高鳴りをなんとか鎮めようとするも、中々治まらない。

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