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その艶めかしさに、思わず咳払いしてしまった。刺激が強すぎるのだ。
「……なんだ」
橙里の様子を不審に思ったのか、稜が橙里の方を向いてそう言ってきた。
「なんでもないよ」とは言ったが、なにもなかったら稜が声をかけてくるはずもないだろう。
チューハイを飲むと、気分が段々高揚していくような感覚に陥った。高揚、と言っても興奮するようなものではなく、隠していたものがぽろぽろと消しゴムの屑のように零れるようなものだ。
当然、惣作の死によっていつもより弱くなった精神でそれを制御することは出来ない。
「……稜」
「ん?」
「寂しくない?」
一瞬、なにを言いたいのかわからないというような顔を作ったが、すぐに理解してくれたようで思案するように目を伏せる。
稜が唐揚げを口に入れ、何回か咀嚼して喉仏を動かして飲み込んだところで箸を置いてきっぱりと言った。
「寂しいに決まってんだろ」
「……」
「俺が人が死んどいてなにも思わない非情な奴とでも思ったか? さすがにそこまで最低じゃねえよ」
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