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その言葉に何故か安堵してしまった。稜でも、そのくらい考えるんだということと、やはり優しいという感情で満たされたのだ。 今なら、ずっと隠していた弱さを見せてもいいと思った。 「……稜」 「今度はなんだ」 「僕さ、身近な人が死ぬ度に夢を見るんだ。多分、稜は知らない」 稜の顔を見ることが出来ず、俯いたまま喋る。稜が息を飲む気配がした。 そのまま橙里は続ける。 「夢の内容は毎回違う。でもその夢はかなり怖くて、僕にとって苦痛以外の何物でもなかった。それこそ、熱を出したときみたいに」 「……」 「いい歳した男が泣くなって思うでしょ。でもね、どうしても稜に知られたくなかった。……なんでかわかる?」 稜に力なくそう問いかける。すると稜は無言で首を横にふるふると振った。黒い髪が揺れる。 言うのを躊躇って、また口を開く。なにかがつっかえて声が出なくなりそうだったが、橙里は稜なら大丈夫。そう思い声を出した。美しく繊細で、よく耳にすっと入ってくる声だ。

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