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「もし稜がそれを知ったら、僕に優しくしてくれるでしょう? 稜に甘えちゃうのが怖いんだよ」
「……怖い?」
「これ以上迷惑かけたくない」
少しだけ稜に近付き、真っ直ぐと目を見てそう告げた。その顔は無表情で、そこからなにかの感情を読み取ることは出来ない。
でも、そこに橙里に対する嫌悪感や蔑みはなかった。
なにか言われるのかとびくびくしていると、稜が大きくため息を吐く。
「おまえ、俺のことなんだと思ってるんだよ」
「……え?」
「どれだけ我慢した? 自分の弱さを隠した? んなガキみてえなことしなくていいんだよ」
「稜?」
「迷惑なんてかけるためにあるんだよ。おまえに対してそう思うことはないし、おまえのことを俺は知りたいと思う」
稜が整った顔を若干歪ませながらそう言った。今日は涙腺が緩んでいるのか、よく泣きそうになる。いや、そんなことは関係なしに純粋に泣きそうになった。
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