251 / 527

[14]-28

「もし稜がそれを知ったら、僕に優しくしてくれるでしょう? 稜に甘えちゃうのが怖いんだよ」 「……怖い?」 「これ以上迷惑かけたくない」 少しだけ稜に近付き、真っ直ぐと目を見てそう告げた。その顔は無表情で、そこからなにかの感情を読み取ることは出来ない。 でも、そこに橙里に対する嫌悪感や蔑みはなかった。 なにか言われるのかとびくびくしていると、稜が大きくため息を吐く。 「おまえ、俺のことなんだと思ってるんだよ」 「……え?」 「どれだけ我慢した? 自分の弱さを隠した? んなガキみてえなことしなくていいんだよ」 「稜?」 「迷惑なんてかけるためにあるんだよ。おまえに対してそう思うことはないし、おまえのことを俺は知りたいと思う」 稜が整った顔を若干歪ませながらそう言った。今日は涙腺が緩んでいるのか、よく泣きそうになる。いや、そんなことは関係なしに純粋に泣きそうになった。

ともだちにシェアしよう!